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BLが好きです。わりといい年の大人です。詳細は「ごあいさつ」記事をご覧ください。
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鈴木おさむ『芸人交換日記〜イエローハーツの物語〜』
こういう作品に弱い自分。
売れない芸人イエローハーツが、お互いの本音をぶつけ合う為に書いた交換日記のていで進む物語です。
何が読んでてたまらなかったかって、泣かせようとしているところ!
夢を見たことある人や今の自分に足りないものを感じている人がボロ泣きするのを見透かして書いているに違いない!さすがは敏腕構成作家!
購入してパラ見をした時点で滲みそうになり、読みはじめたら案の定後半にいくにつれ涙が止まりませんでした。くやしい!

最近の風潮として「感動して泣きたい〜(>_<)」と「あえて泣かせるような作品は浅はかだ」の二つがあると思います。それはネット民とテレビ民のソースや考え方の二極化も原因しているかもしれないし、大衆に向けた娯楽作品の傾向として「泣かせ」がキーワードになっているからかもしれない。しかしこの「泣かせる」展開がこの本では曲者でした。
前半の二人のやりとりは本当にテンポが良くて漫才のよう。読みながら声を出して笑うようなくだりも有り。いや、交換日記ってここまでテンポ良く一日に何度も交換しないだろとつっこみまで入れて楽しく読めました。
ただいろんな宣伝にあるように、後半で話は憎いほど切なくてかなしい。当然それだけ売れない芸人をやっている期間があるので、やめようかどうしようかという話になっていくわけです。そこで見えてくるお互いがお互いに抱く信頼と劣等感。これはまさに「相方」じゃなければ芽生えない感情。
その特殊な関係は芸人をやっている人にしかわからないかもしれない。ただ自分のようにテレビで楽しそうなお笑い芸人を観ているだけの読者は、ハタから見て憧憬を持つばかり。
夢を叶えることも夢を諦めることも才能なら、夢を持つことだって大きな才能です。

芸人の方の感想をチラホラ見かけると、やっぱりリアルなお話らしい。芸人は誰でも売れない時期にこんな気持ちになっていると。
そしてやっぱり一視聴者としてほんの一握りの運も実力も持った芸人さんをテレビでぼーっと観ているだけの自分は、そんな関係に対して涙を流すことしかできないのでした。
ただ娯楽として、その涙が酸っぱくても爽快であるところがやっぱりくやしいな、狙い通りです。
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川本三郎『マイ・バック・ページ ある60年代の物語』


全共闘時代に週刊誌の記者だった方の回想録です。この時代を舞台にしたフィクションやノンフィクションに触れるたび、今の時代にはない熱を感じます。
学生運動も安保闘争も本の中の出来事でしかない世代の自分は、この頃について語る年上の方を見ると何だか今の自分が恥ずかしくなるのです。
この本を読んで思ったのは、きっと自分が羞らうように、この時代の若者は戦争する外国の同年代や権力と闘う若者に対して羞らっていたのではないかと言うこと。
この作品の中の著者は25歳~27歳。学生運動ではなく、学生運動を取材する記者として腕章を付けて現場に乗り込みます。この時の気持ちもやはり、必死で闘う学生に混じって安全な場所から取材をしている自分に対して、忸怩たる思い。
「あの時代は良かった」なんて気持ちはこの作品から読みとれません。学生が授業を受けずに暴力を、主義を、主張を振りかざす得体の知れない熱の恐怖です。
ただ、そう言った熱をハタから見た羞かしさ、そして寄り添った後ろめたさを感じました。
 
印象に残っているのが、川本氏の取材した若者達の中のM君。彼は富裕な大学生だけど大学へは行かず、運動というより放蕩の日々を送っており、お金が無くなると有閑マダムにお小遣いをもらう。何が理想か、革命かという堕落ぶり。これが結局、学生運動の一部でした。もしくは静岡で真剣な高校生。米軍相手に反戦スナックをひらく若者二人。
自分にとっては目新しさと、何かに若さを捧げる羨ましさがありました。
 
ところがこの本のおそらくメインである筆者が逮捕されるまでが、熱を急激に冷ましていきました。
自分と同じ文学や同じ音楽を好きだったという理由で胡散臭い相手に入れ込んでしまう。そして結局は裏切られてしまう。ジャーナリストの秘匿の義務と倫理の間で揺れ動く筆者の心情は、立場は違えど想像できます。
それ以上に、読んでいる自分自身も気持ちが冷たくなっていきました。
若さって、情熱って何だろう。
今の時代に起こっている社会問題や政治に対する怒りや義憤をどこかにぶつける術を探している人に読んでほしい。
この本の表題は60年代ですが、70年代前半の、熱に浮かされた時代とその終焉まで描かれています。
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